1. ホーム
  2. 私たちの取り組み
  3. 今と昔をつなぐ「升田かぶ」を未来へ

私たちの取り組み

今と昔をつなぐ「升田かぶ」を未来へ

私たちは創業以来「お客様から安心してお買いものいただける店」を目指してきました。
「安心」をお届けするために、その食べものができた背景を伝えることも私たちの役割。
酒田市のとある地域で1世紀以上も昔からつくられてきた野菜を通して、庄内という風土の物語を伝えます。

〈お話を伺った人〉

  • 村上正敏さん(写真:中央)
    「升田かぶ」生産者
    「八幡地域の在来作物を守り育てる会」会員
  • 齋藤真さん(写真:右)
    漬物の梨屋 代表取締役
  • 佐藤善友さん(写真:左)
    株式会社 ト一屋 総務部 やまがた在来作物案内人

生きた文化財”といわれるこの地域だけの作物

京野菜や加賀野菜、江戸野菜などの伝統野菜があるように、山形県内にも「在来作物」が各地に現存しています。
在来作物とは、山形在来作物研究会(山形大学農学部内)によれば
「自家採種しながら世代を超えて栽培され、その地域に根づいた作物」のこと。
鳥海山麓に広がる酒田市升田地区の「升田かぶ」もその一つです。

升田かぶは葉に近い部分が薄緑色をした“青首の白カブ”で、細長く、地際で曲がった形をしています。もともとは「焼畑」といわれる昔ながらの農法で自家用に栽培され、形や大きさは不揃いで市場にはほぼ流通していません。

在来作物の持ち味はズバリ、その個性。味も食感も普通のカブとはひと味違います。しかし時代が進むにつれ、調理加工しやすいF1種(※)の一般野菜が流通し、徐々に生産者は減少。そうした中「このカブの種を未来へつなげたい」と、地元で農業を営む村上正敏さんが、平成24年に有志らと「八幡地域の在来作物を守り育てる会」を立ち上げました。

※F1種とは
雑種第一代(First Filial Generation)のことで、優良な特性を持つ異なる品種を交雑させた品種。品質や栽培のしやすさ、病害虫への耐性や収穫量など、生産効率の良い形質のそろった作物を“一代のみ”栽培することができる。一方、在来作物は種が代々受け継がれてきた固定種で、作物の個性が際立ち、有機的で持続可能な農業の象徴といえる。

スーパーマーケットは食材と出合う場所

ト一屋では、大量生産の波に飲まれず生き残ったこのかぶに着目し、平成25年に「在来野菜『升田かぶ』産地ツアー」に参加。市民に升田かぶを知ってもらう、その橋渡し役になろうと商品化に乗り出します。
生産者の村上さんは升田かぶの特徴をこう話します。「昔からこのかぶを漬物や煮物にして食べてきました。煮るととろけるような味で、すりおろして蕎麦の薬味にすると抜群にいい辛味にもなります。葉っぱは塩漬けにして刻んで混ぜごはんにするとすごくおいしいです」。ト一屋では、地元の人たちの食べ方にならって漬物に加工することに。生産者、加工業者、販売者、すべて地元の人たちで作ろうと「漬物の梨屋」に試作を依頼しました。

懐かしくて新しい新食感の甘酢漬けの誕生

「升田かぶは、同じ在来作物の温海かぶと比べると味にクセがあって、水分量が少ないのが特徴です。味をなじませるために温海かぶよりも10日ほど長く漬けます」と話すのは、漬物の梨屋代表の齋藤真さん。試作を重ねてできあがった漬物は「食感、辛み、甘酢とのバランスと、升田かぶの持ち味が生きた、とてもおいしい漬物になりました。さまざまなカブ漬けの中でもひときわイイ味だと思います」。こうして平成27年に「升田かぶの甘酢漬け」が完成。生産者の村上さんは「在来作物の加工は、一般野菜と比べて手間も時間もかかります。梨屋さんは形が不ぞろいでもかまわないと言ってくれて、本当にありがたいです」と目を細めます。

発売当初は店頭での試食でもなかなか反応が得られませんでしたが、次第に「あの漬物ある?」との声が増え、ここ数年で確実に支持されるように。しかし升田かぶは生産量が少ないため販売数にも限りがあり、生産拡大は目下の課題です。
梨屋の齋藤さんは「この商品の目的は升田かぶを知ってもらうこと。地元で作り、地元で売る、さらに地元の人たちが食べてくれる、その輪がもっともっと広がるといいですね」。村上さんは「このカブが育った升田の自然、景色、人、すべて一つになって地域の盛り上げを図っていきたい」とそれぞれ展望します。

おいしく食べ支えていく升田かぶを未来へ

「升田かぶの甘酢漬け」は、鳥海山・飛島ジオパークの認定商品にもなり、風土を物語る存在となりました。「もっと地域と広くつながって、みんなでアイデアを出し合いながら升田かぶを残していきたい。そして、このカブを育てたいと思う若い人が出てきてくれることが一番の願いです」と村上さん。今年こそ念願の「焼畑」の実現を願って、ト一屋では”生きた文化財”を守る取り組みを続けていきます。

〈ト一屋 担当者のコメント〉

在来作物は、多くの人で食べて守るもの。なぜ山形県にこれほど数多くの在来の「かぶ」があるのか、「升田かぶの甘酢漬け」の鮮烈な味を味わいながら、その歴史をぜひ調べて紐解いてもらえたらと思います。

〈商品情報〉

升田かぶの甘酢漬け

販売期間:11月末頃~ 限定数販売
価格:1袋236円(税込)
※令和3年1月現在

・ 取り組みの一覧をみる