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私たちの取り組み

庄内スマート・テロワール

“庄内産”で未来をつくる
~庄内スマート・テロワールのおいしいもの~ 2皿目

庄内産の商品

【大豆加工品ができるまで】

  • 農家で大豆を栽培して、山大へ出荷

  • 山大から(資)鷲田民蔵商店に出荷

  • (資)鷲田民蔵商店で味噌に加工

  • (株)ト一屋から山大に発注、販売

〈参加者〉
庄内スマート・テロワール
大豆チーム

  • (写真左から)
    合資会社 鷲田民蔵商店 専務執行役
    業務統括責任者
    鷲田拓朗さん
  • 山形大学農学部 エコサイエンスコース准教授
    桒原良樹さん
  • 株式会社ト一屋 食品マネージャー
    金子勉

進行:コマツ・コーポレーション

――大豆の加工商品はどのようにして決まったのでしょうか。

桒原私が山大に着任したのはスマテロが始まって3年目で、当時は「豆腐」の開発を進めていました。学生と一緒にト一屋さんや主婦の店さんで試食会とアンケート調査もしましたが、結果的にロットや規格面で難しいということで商品化に至らなかったんです。そこで並行して走っていた味噌と醤油のうち、味噌が形になったということですね。

桒原良樹さん

山形大学農学部 エコサイエンスコース准教授
桒原良樹さん

――味噌であれば原料に庄内米も使えますし、鷲田さんのような老舗があったことも大きいですね。

金子酒田では鷲田さんといえば甘酒のイメージが強いので、試食会でもお客様に「どこの味噌?」と聞かれて「あの甘酒を作っているところのお味噌屋さんですよ」って言うと、「あぁ~!」って皆さん仰って。

桒原名前が通っているのは強みですよね。

鷲田味噌は信州みそや仙台みそのように地域ごとに特色がありますから、山形、庄内産の味噌があってもいいですよね。弊社の商品は原料が庄内産なので「庄内味噌」というブランドはなくても、地元のお米や大豆でできていることを地域の方々に知ってもらいたいと思ってやってきました。醤油にはそういった地域性がほとんどないんですよ。

――たしかに大手メーカー、ナショナルブランド(NB)商品の醤油は、国産原料で作っているものもありますが「〇〇醤油」のように地域の名前がついたものはあまり見られませんね。
ちなみに、庄内人の味噌の嗜好はあるんでしょうか。

鷲田味噌文化ではありますよね。春は孟宗汁、夏は枝豆やとうもろこしのみそ汁、秋は芋煮、冬はどんがら汁と、四季折々で味噌を使った郷土料理もありますしね。

鷲田拓朗さん

合資会社 鷲田民蔵商店 専務執行役
業務統括責任者

鷲田拓朗さん

――白味噌と赤味噌、庄内はどちらの方がよく食べられているんでしょう。

金子店頭では赤の方が強いですが、最近はだいぶ変わりつつあります。
年配層は赤を買われる方が多くて、いつも決まったものを選ぶ傾向です。中間層はいろいろと試す方もいて、白のこしを選ぶお客さんが増えてきていると思いますね。

桒原庄内全域を対象にアンケート調査をした際、「粒」と「こし(すり)」、「赤」と「白」で意見を集めた時は、「赤の粒」と「白のこし」が少しだけ多かったです。年齢が上がると赤粒、若い人だと白こしと、年齢で好みが分かれるのかなと。

鷲田そもそもこの2つの違いは熟成期間で、白系の味噌は3カ月ぐらい、赤系の田舎味噌や天然醸造になると6カ月以上になります。

金子勉

株式会社ト一屋 食品マネージャー
金子勉

――スマテロ味噌は「白のこし」ですね。

鷲田そうですね。弊社の味噌は昔から学校給食で使われていて、それが「白のこし」で、その味に近いものです。皆さんが慣れ親しんだ味でもありますし、広く受け入れられやすい味に仕上げています。

――同じ「白のこし」でもスマテロ味噌と給食の味噌では味が違うのはなぜですか。

鷲田作り方や麹、米は同じなんですが大豆の品種が違うんです。
弊社では基本的に大豆はエンレイという品種を使っていますが、スマテロ味噌はリュウホウ。リュウホウの方が甘みが強くてうま味につながる特長を持っています。
また、原料の米は地元産はえぬきの一等米です。コシヒカリやササニシキ、雪若丸といろいろな米で米麹を作ってみましたが、はえぬきが一番麹の出来がいいというか力強いものができたので。

――試食会でのお客様の反応はいかがでしたか。

桒原学生が売り場に立っていることもあって、皆さん好意的に足を止めてくださいました。アンケートで多かった意見が「甘い」「味が濃い」というもので、これは大豆や麹の甘みで、実際には塩分濃度は高くないんです。ということは逆に、塩分が少なくてもうま味が強いので減塩につながると私は思っているんですよね。

鷲田スマテロ味噌の特徴は、大豆の甘みと、手づくりの麹です。弊社はすべて手麹で仕込むので、力強い麹、甘みが強いものになるのかなと。大豆と麹がダブルでうま味が強いんですよね。

――味噌は家庭の味があるので、味の好みを探るのは難しそうですよね。

鷲田そうですね。味噌は昔から一種の嗜好品といわれて、スーパーさんだと50~60品目(SKU)ぐらいありますかね。その中から選ぶのは大変ですし、きっと一度決めた味噌を使い続けたいお客様が多いですよね。

――ト一屋さんの売り場でも、味噌と醤油では味噌の需要が高いのでしょうか。

金子そうですね、売り上げは大きいです。醤油とは比べものにならないですね。
とは言っても今、基礎調味料自体の売り上げが落ちています。ただ、味噌は下がっていますが、インスタント味噌汁は逆に伸びています。それでもスマテロ味噌は、一定の売上をキープしている状況です。

――基礎調味料が下降傾向という中で、スマテロは「NBよりもおいしく、価格は安く」と。

金子お客様が「手が出せる金額」ってあると思うんですよ。今の価格も、地元のお味噌屋さんとしては安く提供しているわけですが、NBメーカーと比べて激安かというとそういうわけではないですよね。

桒原むしろ高いくらいですもんね。

金子そう、それでも普通に売れています。

鷲田味噌の市場でどう戦うかとなると、地元産のこだわった原料を使って、手が出るくらいの価格帯で提供することなんですよね。ですから、スマテロ商品をNBブランドよりも価格訴求品として売り出すには実際に難しい点もありました。

――丁寧な味噌づくりをされているのでその価格の根拠はぜひ知ってほしいですよね。ト一屋さんで取り扱っている味噌の中で、スマテロ味噌はどういった位置づけですか。

金子うちが「推したい」という部分でいえば、地元の原料を使って地元で製造されたもの、これが一番だと思うんですね。他の商品は輸入大豆を使ったものもまだ多いですし、そういう意味でスマテロのような商品は貴重ですから、販売する意味があると思います。

鷲田もともと味噌屋、醤油屋は全国に 1000 数社あったのが、今は数百社になって、さらに減っていくと思います。だからこそこうした取り組みが大事になってくるんじゃないかと思っています。

――スマテロの耕畜連携でいうと、大豆は豚のエサなどに利用されているんでしょうか。

桒原油を搾った大豆のかすと、規格外品をエサにしていますが、大豆の場合は規格外品もそれほど多くありません。大豆かすも豆腐に加工すればたくさん出ますが、おからとして販売できない余剰分を飼料に利用します。おからだと油が抜けているので飼料にしやすいんです。一方で味噌は大豆をそのまま加工するので、かすはほとんど出ないんですよね。

――鷲田さんやト一屋さんは、大学とのこうした連携をどう感じていますか。

金子山大さんが中心にいることで、テロワールの意義がはっきりしますよね。原材料からすべて地元産の商品を作れることは一番のメリットだと思います。

鷲田山大ブランドというのがやっぱり強みの一つとしてあると思います。

――座談の締めくくりに、皆さんの展望をお聞かせください。

桒原私は大学の研究者という立場なので、スマテロが庄内でうまく普及していってもらいたい、安定してほしいというのが一番です。もう5年経ったともいえますが、まだ5年しか経っていない部分もあって、まだ試行錯誤しています。まずは安定させて、さらにトライしていく形にできればいいですね。
それが研究モデルになって、他地域にも広がって、まさにスマート・テロワールという理念が、日本に根づいていくといいかなと思います。

鷲田この商品が庄内のいいものだよということを、まずは地域の方々に知っていただくことですね。以前マーケティングで、「庄内に地元の味噌なんてあったの?」という消費者の方が多くいることが分かりまして、僕の使命としては、うちのブランドもそうですが、スマテロの商品を地元の人たちみんなに知ってもらうのがまず一つ。あとはスマテロの取り組みそのものを県内や東北、全国へと紹介できるようになればベストかなと思っています。

金子私たちは販売面の強化として、お客様にテロワール自体の意味をもっとご理解いただくということですね。こういうふうに作られた商品ですよという部分をアピールしていく。あとは、味噌汁以外での味噌の使い方を提案して、汎用性を広げていかないとこれからの伸びにつながっていかないだろうと。味噌汁としての使用頻度は減っていますが、味噌を使った調味食品は種類も多く出ていて売れていますから、味噌は皆さんが好む味なんですよね。今は、寒鱈汁や芋煮会といった定番的な売り方が中心ですが、それ以外のメニューの提案もして、味噌を使う頻度を上げる工夫をしていきたいと思っています。
山大さんからこの味噌を使った料理コンテストをしていただくとか、酒田市の南高校の調理科の生徒さんから味噌の料理を提案していただくとか、地域でレパートリーが増えていくとすごくいいですよね。

鷲田スマテロ味噌は何にでも合うように作っていますので、庄内でよく使われる魚のダシともうまくなじむと思いますし、野菜でもお豆腐でも何でもいけるお味噌です。
味噌というのは料理の中でも一番手ではなく二番手ぐらいがいいんです。素材を持ち上げてくれる、食材のうま味を出すためにあるのが味噌だと思っています。

〈商品情報〉

庄内スマート・テロワールみそ

1袋 430 円(税込)※2022(令和4)年8月現在
販売店舗:みずほ通り店、千石町店、駅東店、新橋店、高見台店、住吉町店

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